福岡パルコ

INTERVIEW HEY!PARCO SPECIALインタビュー

体験する楽しさを。
TACHINOMIST×福岡PARCO、最初で最後のコラボ

落水 研仁 HEY!PARCO SPECIALインタビュー

KENTO OCHIMIZU

落水 研仁/株式会社Thinkingfor 代表取締役社長

福岡中心部の立ち飲み屋をめぐるイベント「TACHINOMIST(タチノミスト)」。立ち上げたのは「立ち飲みを福岡の文化に」という想いを掲げ、自身も「MEGUSTA」など複数の立ち飲み店を経営する落水 研仁さん。
TACHINOMISTは回を重ねるごとに広がりを見せ、10月30日から11月15日に行われる第11回目は福岡PARCOが全面タイアップ。合言葉は「Hey! KANPAI!」。
TACHINOMISTの事務局を務める落水さんと吉村さんに、今回の意気込みを伺いました。

株式会社Thinkingfor 代表取締役社長/落水 研仁
事務員/吉村 俊也

「TACHINOMIST×パルコ」で新しいステージをひらく
TACHINOMISTは今回が11回目。回数を重ねるごとに参加店も増えているそうですね。

落水さん:

ここまで大きくなるとは僕も思っていなくて。毎回、何がうまくいった要因だろうと事務局の吉村も含めて振り返りをしながら、自分たちの仮説を一つひとつ確かめて回を重ねてきました。

吉村さん:

だんだんと規模が大きくなって、ここから別のステージかなと思っていたところで、今回のタイアップの話をいただきました。

落水さん:

これまでとは別次元の挑戦になるなという期待感とちゃんと受け入れができるかなという緊張感、今は両方がありますね。

TACHINOMISTとして新しいステージとはどういったことでしょうか。

吉村さん:

「立ち飲みを福岡の文化に」という目標に対して、これから参加者の層をどう広げていくかというテーマがありました。広げていきたい対象が、まさにパルコのメインの顧客層である20代の方たちなんですね。

落水さん:

今の20代ってコロナ禍で学生生活を送っていて、コミュニケーションがすごく難しかった時期を経験していますよね。

僕たちのお店にも大学生のスタッフがいて、その周りの子たちが立ち飲みにはまってくれたりしています。最近は若い方が集まる立ち飲み店も増えていて、その世代の方が来てくれることでお店の雰囲気も変化したり、居場所としての受け皿が広がっていって、街全体がもっと楽しくなるんじゃないかなって思っているんですね。

もっとたくさんの若い世代の方にこんな場所があるんだって体験してもらうには、TACHINOMISTはいい機会かなと思います。

体験としての楽しさをすごく大事にされていますね。楽しさの正体ってどういったものでしょうか。

落水さん:

僕は、楽しさ=コミュニケーションって捉えています。

人との出会いや会話が生まれるところに、お酒とおいしい食べ物がある。はじめて会う人たちと肩を並べて飲むという体験。

これが楽しいということは分かっているので、どう仕組み化して広げていくかだと思っています。

どの立ち飲み店でも楽しさを感じられることが大事なんですね。

落水さん:

今は世界中から福岡に来てる人たちもいて、TACHINOMISTに参加する人がたまたま入ったお店で楽しさを感じられなかったら、その思い出で帰ることになってしまう。それでは立ち飲みは福岡の文化にならないですよね。

TACHINOMISTに参加している店舗での体験のクオリティを上げていく必要があると思っています。他店舗の人間としてそんなことを言える立場ではないことは重々承知した上で、このイベントを通じて立ち飲み店のクオリティをどう上げていくか。僕自身の課題として今考えていることですね。

あたらしい文化をつくる挑戦者として
今回福岡PARCOとのタイアップとなりますが、お二人から見て福岡PARCOの飲食にはどんなイメージがありますか。

吉村さん:

福岡PARCOの飲食店はどこも行列ができていて食事のイメージはあっても、お酒のイメージはないですよね。

それでも数年ごとにお酒の企画やイベントにチャレンジされるのがおもしろいなと思っています。その度にお声かけをいただいて、誘い方も上手なのでご一緒するんですけど、実は毎回そんなにうまくいってないんですよね。(笑)

学習しないのかなって思ったりもするんですけど、ちゃんとしている大人のように見えて遊び心があるっていうか。良い意味でのギラツキというか、輝きというか。そういうチャレンジの姿勢は仕事人としてうらやましさも感じていますね。

うまくいかない挑戦もあったなんて、少し意外な感じがしました。

落水さん:

実は、まだコロナの影響が色濃かった時期に、福岡PARCOで期間限定の立ち飲みを出店させてもらったことがありました。

僕たちの会社は「サードプレイスとしての居場所づくり」を一番大切にしているので、コロナの期間もお店を閉めないと決めていたんですね。サードプレイスがなくなったらダメだろうって。

キッチンカーも、お弁当も。それこそ、北野エースさんをつないでいただいて作ったコラボ商品の物販も、あの時期は本当に色々なことにチャレンジしましたね。そのなかで、期間限定の立ち飲み営業にもチャレンジさせてもらいました。

よく声をかけてくれたなと思うし、僕たちもよくやったなと思います。

吉村さん:

実際には本当にたくさんの人が来てくれたんですよ。今だから言えますけど、相当密になっていましたから。みんな我慢していたんだなってその時に感じたんですよね。その光景を見ながら、立ち飲みを再開しても大丈夫だろうって背中を押してもらった気分でした。

落水さん:

あの場所に救われた方がいたり、その方にとっての新たなサードプレイスに僕たちがなれたりして。そこから僕たちのお店に来てくれる方が増えた印象もあったし、実際に新しい店舗も増えていくきっかけにもなりました。

あの時にチャレンジさせてもらって本当に良かったなという思いがありますね。

お二人にとってパルコはどんな印象ですか。

吉村さん:

福岡PARCOに行くと、若い子も結構上の世代の方もいますよね。
すごいなって思うんです。パルコが発信しているカルチャーやあの場でしか感じられないエモさを各世代ごとに吸収しておしゃれになったりしているんだろうなって。そういう意味でパルコって時代なのかなって思いますね。

落水さん:

今回こうやって深く関わらせていただいて、僕が特に感じているのが、本当にカルチャーというものをすごく意識してやってこられているんだなってことです。パルコ側の思いもすごく伝わってきますし、またパルコは常に挑戦者なんだなとも感じています。

今でも福岡PARCOにはお酒のイメージがほとんどないと思うんです。それでもTACHINOMISTという飲み歩きイベントにタイアップすることが、まずめちゃくちゃ挑戦者じゃないですか。

しかも今回の企画で、TACHINOMISTからパルコへ送客できるかといえば全くの未知数ですよね。でもそれをやってしまう。

合言葉も「Hey! KANPAI!」。パルコという言葉は出てこないけど、それで行きましょうって。そんなところも挑戦者だなって思っていますね。

TACHINOMISTも、今までもこれからも挑戦者としてやっていきたいという思いがあるから、パルコの姿勢をすごくリスペクトしていますし、今回ご一緒することで文化にするための足跡を残したいですね。

福岡の立ち飲みの楽しさと可能性を広げていく
「立ち飲み」というスタイルに、落水さんはどんな可能性を感じているのでしょうか。

落水さん:

僕もここ数年で本当にそうだっていう確信が持てた感じではあるんですが。

屋台もそうですけど立ち飲みも、普通のお店ならありえない距離感で飲食しますよね。そのことが生むコミュニケーションがあると思っているんですね。

パーソナルスペースが干渉しあう距離感だから店主やお客さま同士に自然なコミュニケーションが生まれて仲良くなっていく。

もう一つは、コミュニティに気軽に入り込めるかたちだと思うんですよ。

どんなコミュニティでも一度出来上がってしまうと新しい人が入りづらいことってあると思うんですけど、立ち飲みの場合は新規の方も入りやすくて、また新規の方が入ることで常連さんもマンネリ化せずに楽しめる。

新規の方も常連さんがいる安心感があるし、常連さんが新規の方におすすめを教えてくれることもあって、そういう融合って色々な飲食の形態を見ていてもなかなかないですよね。

その魅力に気づいたきっかけは何だったんですか。

落水さん:

もともとはスペイン料理のお店をしていて、視察も兼ねてスペインのサン・セバスチャンに行った時に入った立ち飲みのバルでの体験がものすごく良くて、旅の楽しさが1ランク上がった感じがあったんです。もう絶対これを福岡でやろうって思ったのがきっかけですね。

店主の方も、旅行者とか関係なくコミュニケーションをとってくれて、現地に入り込んで友達ができたみたいな感じがあって、すごく印象に残っています。

今、福岡にも海外からたくさんの方が来ていますけど、僕たちの店を選んでくれている理由はコミュニケーションを取りたいから。

ただ福岡のおいしいものを食べるだけじゃなくて、現地の人と会話して友達ができたという体験は旅の楽しさを深めてくれます。これは、他の飲食形態じゃなくて立ち飲みだからできることなんじゃないかと思うんです。

立ち飲み店では、お店が混んできたらお客さま同士で場所を詰めたり譲り合って、そうやって入れてもらった場所で会話が生まれていきますよね。お客さんの人数によってもお店の空気が変化するところもおもしろいですよね。

落水さん:

ほんと、変わりますよね。

福岡のラーメンやもつ鍋といった食文化のように、福岡に来たら立ち飲みに行こうという文化を作りたい。そこで出会った人同士が友達になって、相手が旅行者の方なら今度は自分が旅をした時に現地で会ったりして、日本中、世界中の人たちとつながって広がっていくといいなと思っています。

気軽に、だけど確かに人とつながれる場所ってありそうでないですよね。

落水さん:

今はフリーランスやリモートで仕事をする人も増えていたり、職場の飲み会も無くなっていたり、人との関係性が希薄になっていますよね。

仕事の後にどこかへ飲みにいこうと思う時だって、孤独にご飯を食べたいわけじゃないですから。ファストフードやラーメン屋さんも良いけど、飲みながら店主や居合わせた人と軽くコミュニケーションを取れる方が気分も上がりますよね。

立ち飲みはその救世主じゃないですけど、上司も部下もないゆるやかな関係性の中で会話を楽しめる場所って、世界中の、特に先進国の人たちが潜在的に求めているものだと思うんです。

実際、韓国にもそういう場所がなかったみたいで日本スタイルの立ち飲みが増えているし、TACHINOMISTにも番外編として参加する店舗もあるんですよ。

「福岡の立ち飲みは閉鎖的な感じがしない」と他県からTACHINOMISTに参加した方が話していたそうですが、どうしてだと思われますか。

落水さん:

歴史がないということが一番の理由だと思います。立ち飲みというスタイルが昔からあれば、店主が強い形もありえたのかもしれないですけど。

TACHINOMISTが始まった2018年は立ち飲み屋は全部で20店舗くらいしかなくて、みんなオープンしたばかりでそれぞれの顔が見えるみたいな状況でしたから。

福岡の飲食のアットホームな接客というのがベースにあったうえで、店主がお互いのお店を回って店舗同士で仲良くなって、みんなでそういう世界観を作りたいねと確認しあえたことも大きかったと思いますね。

福岡の立ち飲み屋さんは関係性もフラットで、そういうスタイルを見ながら新しいお店ができているんで、必然的にそうなっているというのが僕の解釈ですね。

「Hey! KANPAI!」。第11回目のTACHINOMISTにかける意気込みを教えてください。

吉村さん:

今回の開催によって、これからのTACHINOMISTの方向性が見えてくるような気がしています。福岡PARCOとの最初で最後のコラボをチャンスとしていい形で活かしていきたいなと思っています。

落水さん:

今回、福岡PARCOからのバックアップがあるので集客は全然心配していなくて、僕たちとしてはもう楽しませるしかないと思っています。参加する店舗の前のめりさがイベントの楽しさを左右すると思っているので、その機運を最大限に作っていきたいですね。

あとは予想を上回る集客があった場合の対応や、提供サービスが不十分にならない様に。 心から楽しんでもらいたいので。もうそれだけですね。

落水 研仁(おちみず けんと)

株式会社Thinkingfor代表取締役。インテリア業界(アクタス)で8年間経験を積んだ後、独立。
福岡を中心に「MEGUSTA」をはじめとする立ち飲み酒場やスパイス業態などを多角的に展開。

スペイン・サンセバスチャンのバル文化に着想を得た独自の立ち飲みカルチャーを発信し、 スタンプラリー「TACHINOMIST」の企画・運営や立ち飲みアプリ「tachimap」の開発など、 街と人を繋ぐコミュニティ創出を精力的に牽引している。

吉村 俊也(よしむら としや)

株式会社Thinkingfor勤務。
事務員として頑張っている